知っておきたい「輻射熱(ふくしゃねつ)」のお話
久しぶりの更新!イシドメの頭の中にウンチクネタもたまってきたので、一機に放出していきたいと思います。
今回は輻射熱について。熱の伝わり方には、伝熱・対流・輻射の3つがあります。この3つのうち以外と理解されにくいのが輻射についてではないかと思います。
家の中がなんだか「暑い」「寒い」と感じるとき、気温だけじゃなく、目に見えない熱が関係しているって知っていましたか?
その正体が「輻射熱(ふくしゃねつ)」というもの。
ちょっと難しそうな言葉ですが、実は私たちの暮らしにとても深く関係しているんです。
目に見える光と、見えない熱の関係
まず、光と熱の正体について少しだけ。
私たちの目に見える光(虹のような7色)は、電磁波の一部。
赤・橙・黄・緑・青・藍・紫という虹の外側には、目には見えない「赤外線」や「紫外線」があります。
赤より外側が赤外線、紫より外側の電磁波が紫外線です。
そのうち、赤外線は熱として感じることができる電磁波。
よく「遠赤外線ヒーター」とか聞いたこと、ありますよね。
つまり、赤外線=輻射熱=熱を伝える見えない光なんです。
例えば、
• さわってないのに隣の人の「熱気」を感じたり、
• 氷のそばで「ひんやり」感じたり、
• おひさまのぽかぽかやを感じたり(輻射熱は空気がなくても届く)
• 暖炉のあたたかさを感じたり、、、
そんな時に働いているのが、この輻射熱です。
触れていなくても、私たちは日々、輻射熱のやり取りをしているんですね。
体感温度に影響するのは「空気の温度」だけじゃない
「今日は室温23度にしてるのに、なんか寒い…」
そんな経験、ありませんか?
その原因のひとつが、壁・床・天井の表面温度です。
人は空気の温度だけでなく、まわりのものから伝わってくる輻射熱にも影響を受けています。
一般的に、
体感温度 ≒(室温 + 表面温度)÷ 2
と言われています。
だから、家の断熱性が低いと、壁や床が冷たくて寒く感じるんです。
逆に、断熱性の高い家は、室温と表面温度が近いのでとても快適です。
熱を反射する「Low-Eガラス」って?
輻射熱には、金属に反射するという特徴があります。
その特性を活かしたのが、「Low-E(ローイー)ガラス」です。
これは、ガラスの内側に薄い特殊な金属膜を貼ったもので、
• 外の暑さを反射して、家の中に入れにくくする
• 室内の冷暖房の熱を外に逃がさない
という効果があります。
透明であるガラスは、壁や屋根のようには断熱材として作用することができません。
複層ガラスにして熱伝導率が低いガスを充てんし、断熱性を高めていますが、透明なため輻射熱をそのまま透過させてしまいます。
そこで、このLow-E(ローイー)ガラスが活躍するのです。
余談ですが、これは透明なガラスだからこそ、有効です。
アルミなどの金属を貼った透湿防水シートにも似たような考え方がありますが、
通気層が狭かったり、外壁材が熱を持ちやすい素材(サイディングなど)だと、反射された熱がこもってしまい、逆に熱を伝えてしまうこともあります。
快適な温度だと窓辺も気持ちいいにゃん。
夏の暑さ対策は「家の外」から始めよう
輻射熱のことがわかると、家の建て方や外構計画にも意識が向きます。
たとえば夏。
コンクリートやアスファルトはとても熱を蓄える素材。
敷地の庭や駐車スペースをすべてコンクリートや樹脂デッキなどで囲ってしまうと、熱が家にどんどん伝わってきます。
もちろん、駐車場にはコンクリートを用いるのが実用的ですが、
それ以外の部分には、
• 芝生
• 木陰
• ウッドデッキ(本物の木)
• グリーンの植栽
などを取り入れると、ぐっと温度が下がり、室内も快適になります。
さらには、砂利のほうがコンクリートよりは温度が上昇しにくくなります。
最近は気候が変わってきています。冬はコンクリートなどの蓄熱性を利用することもできますが、特に宮崎のような暖かい地域では、
「冬の寒さ」よりも「夏の暑さ」にしっかり備えることが重要です。
こちらは、真夏にコンクリートをサーモカメラで撮影したもの。
45度近くあります。
樹脂デッキはコンクリートより熱く、50度前後にまで表面温度が上昇
グリーンのあるお庭はサーモカメラで見るだけで涼しそうなのがわかります。
おわりに:快適な暮らしのために、熱の性質を知ろう
「輻射熱」という言葉は難しく聞こえるかもしれませんが、
実は日々の暮らしにしっかり関係していて、
家づくりやリフォーム、外構計画に大きく役立つ知識です。
家の中の快適さは、エアコンの設定温度だけで決まりません。
目に見えない熱の流れを上手にコントロールして、
一年中気持ちよく過ごせる住まいをつくっていきましょう!